夜の酒場のハナシ

 

 

同期との弾丸大阪旅行(滞在24時間)を終えて東京駅で解散し、楽しい余韻とともに締めの酒を飲もうと、1人で地元のバーへ行きました。

 

大好きな店主特製ハイボールを飲んでゆったりしていると、仲良くしてもらっている大学教授がドアを開け、にこやかに入ってきました。

 

となりに座るなり「あのね、ぼく、禁煙したんです。マスターと一緒に男の契りを交わしたんですよ」

 

「あんなに好きだった煙草、いきなり絶ったんですか?!」

 

「ほら、証拠写真もあるよ」

 

教授が見せてくれたのは、ジップロックに入れて水没させた2箱の煙草の写真。水はドロドロに濁っていて、なんともグロテスクな光景。

 

「これを見て、タバコなんてだめだ!と思うようにしてるんです。そしてニコレットのガム。吸いたくなったらこれを噛む。これがまた、辛いんです!」

 

教授は新しく買ったニコレットの袋を開きながら話を続けます。

 

「でもね、聞いて。マスターは全然辛くないんだって!僕はそれが憎たらしい。こんちくしょう、って思うわけです」

 

ああ、副流煙が吸いたい!という教授を尻目に、

マスターはすました顔。全然吸いたくならないですよ、なんて。

 

マスターは静かに語ります。

 

「あのね、先生は煙草に振られたんですよ。僕は煙草を振ったんです。お前なんか大嫌いだっ!て。先生はまだ未練があるから吸いたくなるんですよ。大好きなままで、いなくなった。つまり考え方の問題です」

 

教授は腑に落ちた顔をし、語ります。

「僕は今までの人生で、相手を振ったことないんです。お相手の女性のこと、嫌いにならないんです。 今回はタバコちゃんに振られたんですね。まるで人生の縮図ですね。そういうことか。。」

 

先生はうなずき、私も不思議と納得しました。

 

対象やテーマが違うだけで、物事の捉え方や考え方にはその人なりの一貫性があるのかもしれません。人や物への対応は全て、その人の考え方を表してくれるみたいです。

 

些細な動きや言葉に、人の良さや賢さがにじみでるその過程はとても可愛くておもしろいなと思います。

 

「酔っぱらっちゃって、おじさんのヘルスケアの話なんてしてごめんね。」

 

先生はそう言ってハイボールを飲み干し、頼みそこねたコーヒー焼酎を頼みました。

 

謝らないでください。

ほんとうに人間らしい瞬間を見られる夜の酒場は、まさに人生の縮図かもしれません。

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