身の程知らずかも

 

 

つくばでの取材が終わり、帰路。

 

今日も疲れたなー、どこで飲もうかな、何食べようかな、家でゆっくりしようかな、

 

とか考えてたらいつの間にかいつもの地元のバーの扉を開けてました。

 

なにする?

ハイネケン

はいよー。

 

 

俺も迎え酒しちゃおう、とマスター。

昨日そんなに飲んだんですか?と私。

飲んだね、日本酒を。とマスター。

日本酒しばりですか?

うん、そうだね。

熱燗の季節ですね。

 

酒場でのぶつ切りの会話はぶつ切りにならない。

 

酒は酒呑みの共通の言語。

 

 

 

そういえばさ

 

このあいだの土曜日いっぱい飲んでたけど大丈夫だった?とマスター。

 

家に帰ってからもしこたま飲んじゃいました。

 

酒が欲しいってなってたもんね。とマスター。

 

 

他愛もない会話に、酒に、タバコに。

 

ついつい手が伸びて、ついつい飲んじゃう。

 

昨日も、ついつい食べちゃいますねって言ったら笑われたなぁ。と思い出すのは、彼氏のご両親。

 

結婚する気なんてお互いないのに、もう会ってる両親。

 

 

酒場で隣になった女性は「我慢はしちゃいけないよ」って言ってた。11年の結婚の末離婚したそうだ。

 

「女性は我慢できますもんね」と返しながら、我慢が限界にきた時の自分がふと蘇る。

 

同棲なんて結婚するまでしない方がいいよ。

 

男は我慢できないけど、女は我慢できちゃうの。

 

お風呂一緒に入るなんて、自分の時間がないよね。って気があった。

将来の自分を見た気がした。

 

 

その後女性は帰って(明日は5時に起きるそう)

その後には大阪弁の男性。

 

「マスター、ドラクエクリアしたよ」と言いながら店に入ってきた。

 

あのボス倒した?頭が割れて違うキャラが出てくるやつ。ってマスター。

 

それ僕見てません。クリアできてなかったのかな、と男性。

 

彼も関西出身だよ、とマスター。

 

え、そうなんですか?と私。

 

灘ですよ。とマスター。

 

じゃあ近いですね。灘からのここらへんで東大ってコース?

 

はい、獣医学をしてます。

 

犬とかペット飼ってました?

 

飼ってました。

 

感情移入しないですか?

 

少し感じるけど、他所は他所、ウチはウチで。

治らない病気はないから、それならせめて余生は楽しくしたいですよね。2ヶ月生きるところを3ヶ月伸ばしても、保険もないですから。

 

 

そうだよねー。せめて楽しい方がいいよね。とマスター。

 

僕は食肉とか家畜系ですけどね。

 

 

じゃあ研究?

 

 

はい、でも僕は医学の方へ。

 

 

 

 

 

なんてことのない会話。結婚からのドラクエからの獣医学。

 

ほんの1時間の間に、色んな色を持った人が来ては酒を飲み帰る。

 

 

 

 

 

知り合いにスタンダードプードルをたくさん飼ってる人がいて。と私。

 

このへんですか?通りぞいでよく連れて散歩してる人を見ますよ。

 

 

それ、じゃあ、知り合いです、たぶん。3匹くらい連れてるの。

 

あぁ、でっかい家に住んでるんやろなと思います。と男性。

 

油断も隙もない。

 

犬も歩けば棒に当たる。

人も飲めば知り合いとつながる。

彼の言ったスタンダードプードルの飼い主は今その辺をランニングしているってことを、私は知っている。

 

関西を出て東大で獣医学を学ぶ学生が日常よく見ていた男は、飲み屋でたまたま隣になった女の男だった、ってこと東京だからこそじゃないかしらと思う。

 

地方から様々な理由を抱えて上京して、日々葛藤しながら生きて夜どこかに癒しを求めるのは、地元ではあまりないこと。

 

 

予備情報のない知り合い。地元が同じだけで酒が旨くなる現象。

 

バーの店主になりたいな、と思う。

 身の程知らず?

でも色んな人の抱える色を見て生きるのって楽しい。